プロの技「傾聴」
世の中には人の話を聞く事を専門としている人達が居ます。カウンセラーとか精神科医とかの仕事をしている人にとっては、他の人の話を聞くというのは、文字通り仕事となります。
そのため人の話を聞く技術とでもいうべきものがあります。
それが「傾聴」です。
「傾聴」の字を紐解くと。
文字通り(耳を)傾けて聴くと書く「傾聴」ですが、「聴く」という字をわざわざ当てている事、話し手の方に身体や意識を「傾ける」という字の構成からそのイメージが沸くかもしれません。
「傾聴」ですが、文字通り身体を話しての方に向けて乗り出して一生懸命聞くという字をイメージさせないでしょうか。まさにそうやって聞いてほしいと多くの人が思う姿勢ともいえますね。
実際カウンセラーとか、精神科医の先生は皆、本当に話を聞くのが上手です。いつのまにかすっと自分の事を存分に話してしまいます。もちろんそういった方々は身を乗り出してくる訳ではないですが、非常に安心感をもっていろいろと話せる方が多いです。
「傾聴」とはなんだ?
では、「傾聴」とは何でしょうか。 普通に「聞く」のとはどう違うのでしょうか。
一般的には「傾聴」とは、単に「聞く」のではなく、
相手の言葉に耳をきちんと傾け、
相手が解ってほしい事を「相手の身になって理解しながら聞く」事を
「傾聴」と言います。
言い換えれば、相手(話し手)の話している事、感じている事に共感を持って、それを自分の事のように感じながら聞くとも言えます。
「話し手」にとっての「傾聴」
これを話し手の方から見ると、この人は「わかってくれる」と感じながら話すという事になります。この状態では、話し手は緊張や恐れなどの世間にある様々な抑圧から解放されて、とてもリラックスしながら、素直に自己表現ができる様になっています。
これは脳科学的にも脳の快感中枢が活性化すると言われていて、話し手の方は深い満足感を得る状態となります。よって話し手の方はこういう会話ができる相手とはもっと話したいという衝動を持つ傾向が高く、そのため関係が深く長く続く可能性が高いのです。
傾聴の詳細
では、傾聴を掘り下げていきます。
まず、「相手(話し手)が解ってほしい事を「相手の身になって理解しながら聞く」
というのは、どんな事でしょうか。
これはもう少し詳しく書くと。相手(話し手)の気持ちに想像をめぐらせながら(想像)、相手の感情も考えて(推測)、話し手の身になって(立場を想像し)理解し、相手の意識(言葉)を平易に色をつけずに受け入れる事が大事になってきます。
傾聴の例1
例を上げましょう。
ご夫婦で居て、ある日、季節的に早い大雪が降ってきたとします。
奥さんが言います。
「雪が降っているわ」
この返答として3パターン考えてみました。
例① 「チェーン用意せんといかんかな。」
これは単なる旦那さんの反応の返答です。
旦那さんが情報に反応した。ただそれだけです。
ここには傾聴の要素はありません。何も深まらないです。
例② 「今夜は雪景色になりそうだね。後で外に見にいこうか」
これは奥さんが雪を肯定的にとらえているときの返答です。
別にここまで大袈裟でなくても、「白銀の世界になりそうだね」でも良いです。
奥さんの気持ちを汲み、雪を肯定的に捉え、同意や新たな提案をしている訳です。
雪景色が好きな人なら、好きな風景を一緒に楽しめるという事でより
気分が高揚するのではないでしょうか。
映画とか観劇で好きな物を一緒に見るのに近い気持ちがきっと生まれる事でしょう。
例③ 「寒くなりそうだね。早く戸締りして暖かい物でも食べよう」
これは奥さんが雪を否定的にとらえている場合の返答です。
雪が嫌いで憂鬱だなと思う人も少なからず世の中には居ます。
そういう方はこう言ってもらえると慰めを感じ、
温かい気持ちを相手に抱くのではないでしょうか。
例②と例③の違い
ちなみに②と③の違いの判断は、声のトーンや表情からの情報も含めての判断となります。
「感情によりそう、気持ちによりそう」のが重要ですので、そういった情報も重要な要素となります。
ここまでのまとめ
つまり「傾聴」とは、ただ話を聞くのではなく、
話し手の感じている事を自分の事のように理解し、共感し、
そしてその共感と理解を今度は聞き手が「言葉で相手に返し、伝える」ことなんです。
この『共感と理解を言葉で相手に返し、伝える』ことまでを含めて、「傾聴」と言うのです。
そしてこれがよくいわれる「相手の気持ちによりそう」と言う事でもあるのです。
「傾聴」ができると
さて。②や③の要に気持ちを汲み取って返答してもらえたら、話し手は聞き手の方との関係について、どう思うでしょうか。
ずばりそれが傾聴げできるとどうなるかという話になります。
簡潔に過剰書きでまとめると、
表現の活発化
・気持ちを汲んでもらえる事から。話し手は緊張が取れ、気持ちも落ち着き、心も柔軟に素直になっていきます。またそのおかげで表現がさらに自由に活発になります。
生き生きとしてくる。
・表現が活発になり、さらにその質が深まると、自分でも気づかなかった自分の気持ちに気付く事が多くなり、生き生きとしてきます。そしてエネルギーが溢れてきます。恋愛したての女の子の表情を思い浮かべてもらうと一番分かりやすいかもしれません。
聞き手は心が広く豊かになる。
聞き手は相手の感情に寄り添う事を考えます。そうなるとそこでは自分のいしきによる評価を減らし、すなおに受け入れる必用性が出てきます。そういった経験を積んでいくと、落ち着いた、より深く多様な物の見方や多様な考え方の受け入れができる様になってきます。
人間関係が良くなる
当初からお話している様にほとんどの人は話を聞いてもらい、理解してほしいという情熱を持っています。そのため、傾聴が出来、共感をもって話を聞ける様になると、人と人との心の距離が縮まり、人間関係が良くなります。
職場でのコミュニケーションが深まり、仕事の効率があがる
仕事場では、人間関係に多様な気配りや気遣いが働きます。そのため逆になかなかスムーズな意思疎通ができなくなるケースが多いです。しかし傾聴ができる様になると、すなおに自分の思いを表現できる人が増える訳ですから、隠れていた不満や、野心的な提案などが表に出やすくなり、組織自体が活性化していきます。
最後に
この様な形で傾聴のスキルがあると、様々な形での人間関係の向上が見込めます。
本気で「傾聴」を学びたい方は、1日程度のワークショップが様々な処で行われていますので参加をされてみると良いかと思います。
なおそこまではという方も、
この「傾聴」、つまり
話している相手の感じている事を自分の事のように理解し、共感し、
そしてその『共感と理解を言葉で相手に返し、伝える』ことを是非実践してみてください。
きっと大きな気付きが得られることと思いますよ。